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今回は、犬にとっておもちゃとはどのような役割を果たすのか、種類や選び方、与え方のコツについても解説します。(最終更新日2023年12月4日)
目次
監修
静岡県島田市向谷3-918-9
TEL 0547-33-6010
北里大学獣医学部獣医学科卒業。専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師、日本ペットマッサージ協会とペット薬膳国際協会の講師を務める。東日本大震災における被災動物レスキュー活動などにも参加。一般的な西洋医療のほか、鍼灸治療や漢方、ペットマッサージなどを通して動物の健康に取り組む。
犬にとって、おもちゃとはどんな物?
おもちゃというと、「犬が飼い主といっしょに遊ぶ物」「一人のときに退屈しのぎをするための物」といった、単に遊んで楽しむ物という印象を持たれる方も多いかもしれません。しかし、犬にとってのおもちゃは、生き物としての本能を満たすことができる物であり、飼い主さんとのコミュニケーションを図るための物でもあるのです。
犬は本能から来る「狩猟欲求」を満たすことができる
犬は本来、本能的に「狩りをしたい」という欲求を秘めている生き物です。ですから、犬にとっておもちゃで遊ぶ行為は疑似的に狩りをすることにつながり、それによって本能的な欲求を満たすことができるのです。
そのため、犬の狩猟欲求を満たすようなおもちゃの使い方ができると、犬にとってより良い効果をもたらすことができます。
おもちゃによってできる4つの犬の行動
犬の狩猟欲求を満たすためには、「追う」「捕まえる」「振り回す」「噛んで破壊する」の4つの行動をさせてあげる必要があります。これらは、犬が狩りをするときに起こす行動そのものです。獲物を走って追いかけて捕らえ、振り回し弱らせて、最終的には捕まえた獲物の肉を噛み切って食べるという一連の狩りのパターンとなります。
おもちゃを与えて遊ばせるときにも、この4つの行為を意識して行うことが大切です。そうすることで、犬にとってはおもちゃで遊ぶことが狩りの疑似体験となり、普段の生活では得られない本能的な欲求を満たすことができるでしょう。また、落ち着きがない行動や無駄吠えなどの欲求不満による犬の問題行動を抑制することにもつながっていきます。
犬用おもちゃの種類
一口に犬用のおもちゃといってもたくさんの種類があり、どれを選んだら良いかわからないという飼い主さんも多いのではないでしょうか。続いては、おもちゃの種類別に、特徴や効果などについて解説していきます。
投げるおもちゃ
体を動かしながら遊ぶのにぴったりなのが、投げるタイプのおもちゃです。種類としてはボールやフリスビーなどです。飼い主さんが投げた物を追いかけることにより、「追う」「捕まえる」という行為を疑似体験できます。思い切り走ることもできるので、運動不足の解消にもなるでしょう。小さめのボールであれば室内で転がして追いかけさせたり、物陰に隠して宝探し遊びをしたりもできます。
引っ張るおもちゃ
引っ張るおもちゃとしては、主にロープ状の物があります。ロープ状のおもちゃは、大きさや形状もさまざまで多くの種類があります。引っ張ったり、噛んだりと遊び方次第で、「追う」「捕まえる」「振り回す」「噛む」の、4つすべての行動をさせることが可能です。
引っ張り合いをして飼い主さんといっしょに遊んだり、犬が自分で振り回して一人遊びをしたりもできます。耐久性にも優れているため、遊び盛りの犬にもおすすめのアイテムです。
デンタルタイプのおもちゃ
デンタルタイプのおもちゃは、噛むことを目的としたおもちゃです。フレーバーのついたプラスチック製の物から天然木を使用したもののほか、ガムや動物の骨・角などの素材や形のものまでさまざまな種類があります。
おもちゃに噛みついて壊すのはもちろん、狩りで捕まえた獲物を食べる疑似体験ができるのです。おもちゃを噛むことで歯石除去の効果も期待できるため、犬の口の中の衛生を保つのにも役立つといえるでしょう。
音が出るおもちゃ
おもちゃの中でもとりわけ犬が喜ぶのが、噛んだりさわったりすると音が出るおもちゃです。ボールやぬいぐるみなどタイプはいろいろありますが、音が鳴るおもちゃをさわることで遊びに集中する子は多いです。
犬は個体差もありますが、一般的には周波数約40Hz〜65,000Hz程度の音を聞くことができ、聴力が非常に優れている動物。人間が聞き取ることのできる音は、せいぜい約20Hz〜20,000Hz程度といわれているため、比較すると高音域を中心に、犬は人間よりも段違いに聴力が優れているのです。加えて、音を聞くことができる方向は、人間だと16方向といわれていますが、犬は32方向からの音を拾い聞き分けることができます。
このことから、音が鳴るおもちゃに対して犬は非常に反応しやすく、犬のテンションや遊ぶ意欲を高めてくれる物であるといえるのです。また、犬自身が噛んだりさわったりすることでおもちゃの音が鳴るという仕組みになっていることから、犬の「これはどうなっているのだろう」という目の前の対象物への好奇心を高める効果もあります。
おやつを入れるタイプのおもちゃ
おやつを入れるタイプのおもちゃは、知育玩具としてのメリットが高いおもちゃです。「おもちゃの中に入っているフードやおやつをどうしたら食べることができるのだろう」と、犬が考えながら遊ぶことができます。
おやつを食べたいという欲求から頭を使うことにより犬の脳が活性化され、お散歩などの身体活動と同程度のストレス発散効果があるといわれています。また、集中力をつける、気分転換ができるといったことも期待できます。お留守番のときなどにも最適なおもちゃです。
ただし、犬の知能レベルに対しておやつを取り出すのが難しいタイプの物だと、犬が疲れてしまったり飽きてしまったりして途中で投げ出してしまうこともあるため、注意が必要です。
子犬に与えるおもちゃ選びのポイント
おもちゃでまだ遊び慣れていない子犬におもちゃを与える際には、どのようなポイントを押さえておけばいいのでしょうか。ここでは、3つのポイントについてご説明していきます。
強度があるおもちゃを選ぶ
子犬といえども、噛む力や振り回す力は相当なものです。思い切り遊ばせてあげるためにも、強度がしっかりしたおもちゃを選ぶ必要があります。噛んだり振り回したりしているうちにおもちゃは劣化して破損することもあります。すると、破損したおもちゃのかけらを誤飲する、壊れたパーツでケガをするということも考えられますので、素材や作りをよく見て、できるだけ強度の高い物を選んでください。子犬の異物誤飲事故は、1歳以上の犬と比べて発生件数に4倍の差があり、特に1歳未満の成長期ではおもちゃが原因となる誤飲のリスクを避ける必要があります。
また、犬には犬用と表記されているおもちゃを選びましょう。人間の子供用のおもちゃでは犬の噛む力に耐えきれず、すぐに壊れてしまう危険性があります。こちらも事故の元になりかねないため、注意が必要です。
犬のサイズに合わせて選ぶ
おもちゃのサイズも重要です。犬用のおもちゃには対象の犬の体型などの表記がありますので、注意して見てください。犬のサイズに合わないおもちゃは、事故の原因となりかねません。
例えば、大型犬に小型犬用のおもちゃを与えてしまうと、おもちゃに噛みつくというより口の中に入れてしまい、そのまま誤飲してしまう原因となります。必ず表示を見て、現在の子犬の状態に合った物を選びましょう。
犬の好みに合わせて選ぶ
いくら良いと思っておもちゃを選んだとしても、子犬が遊んでくれないこともあるでしょう。そのため、極力は子犬が興味を持って遊びそうな物を選んであげてください。前述のように、おもちゃにはさまざまな種類があります。月齢やその時期の遊びの傾向などをよく観察しておもちゃを選んであげましょう。
犬用おもちゃを与えるメリット
犬におもちゃを与えるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、5つのメリットについてご紹介します。
メリット1:運動不足の解消につながる
おもちゃで遊ぶことで、運動不足の解消につながります。犬の普段の運動といえばお散歩ですが、雨の日で外に出られない、お散歩に長く時間を取れないといったときには、犬も運動不足となってしまいます。
たとえ外に出られないときでも、ボールやロープなどのおもちゃを使って室内で体を動かして遊ぶことで、ある程度の運動不足の解消ができます。
あるいは、歩くだけではなく、おもちゃによって飛んだり跳ねたりして遊ぶことによって、普段使わない筋肉を動かせるという効果もあります。また、おもちゃで遊ぶことでよく体を動かせば体力も使うため、夜もぐっすり眠ることができるでしょう。
メリット2:しつけやトレーニングになる
おもちゃで遊ぶことは、しつけやトレーニングになります。犬は本来、「考えること」や「ほめられること」が大好きな動物です。ですから、それぞれのおもちゃの遊び方を頭で考えながら遊ぶことは、犬にとって良い刺激となります。
遊びに夢中になっているときの犬は、飼い主さんの声や動作にもしっかり集中することができます。そのため、おもちゃで遊んでいる時間の中で、「待て」や「おすわり」「おいで」などの言葉をかけ、しつけやトレーニングをするようにしましょう。また、このときに、甘噛みをしてはいけないことや興奮しすぎてはいけないことを、体感で覚えさせることもできます。
メリット3:おとなしくさせることができる
飼い主さんの手が離せないときや来客時、あるいは外出先で、しばらくおとなしくしていてほしいときも、おもちゃを与えるのは効果的です。
おもちゃに注意を引きつけているあいだは、いたずらをしたり、騒いで周囲に迷惑をかけたりする心配も少なくなるでしょう。
メリット4:歯磨きの代わりになる
デンタルタイプのおもちゃやロープ状のおもちゃは、歯磨きの代わりにもなります。しっかり噛んで遊ぶことにより、歯垢が落ちる、歯茎を鍛えられるといった効果があります。楽しく遊んでいるうちにデンタルケアができるのは、まだ歯磨きに慣れていない子犬や歯磨きをしっかりしてあげられない状況のときなどに有効です。
ただし、おもちゃで遊ぶだけでは、口内すべての歯磨きができるわけではないため、できるだけ定期的に歯磨きをしましょう。
メリット5:ストレス発散になる
狩猟本能から来る「噛む」「振り回す」といった行動は、時としてどうしてもしたくなってしまうのが犬という生き物です。
家の中で、家具や身の回りにある物を傷めてしまうからといって、無理に制限ばかりさせていると犬もストレスが溜まってしまいます。そんなとき、おもちゃであれば思う存分噛んだり振り回したりしてもいいため、ストレスを発散することができます。
子犬におもちゃを与える際の注意点
子犬にとってさまざまなメリットのあるおもちゃですが、与え方を間違うと効果が減ってしまうばかりか、危険も伴いかねません。ここでは、子犬におもちゃを与える際の5つの注意点についてご説明します。
注意点1:目を離さない
子犬がおもちゃで遊んでいるときは、目を離さないようにしましょう。安全性が考慮された犬用のおもちゃであっても、子犬が我を忘れて噛んだり追いかけたりして遊んでいるうちに壊れてしまうこともあります。おもちゃの部品による誤飲やケガを防ぐため、子犬が興奮しすぎている、おもちゃが壊れかけているなど、トラブルになりそうなときにはすぐに気づくことができるよう、常に近くで様子を見ておく必要があります。
注意点2:遊び終わったら片づける
いくらお気に入りのおもちゃでも、常時手の届くところにあって遊ぶことができる状態にしてしまうと、子犬はそのおもちゃに飽きてしまいます。
おもちゃで遊ぶ特別感やわくわくする気持ちを失わせないよう、おもちゃは遊び終わったらすぐに片づけるようにしましょう。飼い主さんの知らないうちにおもちゃで遊んでしまい、おもちゃの誤飲などの事故を起こさないためにも大事なことです。
注意点3:おもちゃを取り上げない
子犬が夢中になっておもちゃで遊んでいるときに、無理に取り上げてはいけません。せっかく遊んでいたおもちゃを取り上げられてしまうことが続くと、子犬は取り上げられまいと飼い主さんから逃げたり隠れたりするようになってしまうことも。絶対に取られたくないと思うあまり、「うなる」「噛む」など攻撃的な行動をとってしまう場合もあります。
子犬からおもちゃを受け取ろうとするなら、その状況を利用して「ちょうだい」「アウト」などの言葉をかけることで、子犬がおもちゃを自分から返すようなしつけをするのをおすすめします。最初はうまくいかないかもしれませんが、そんなときはおもちゃの代わりにおやつを少し与えるところから始めてみましょう。
注意点4:こまめに洗う
子犬のおもちゃは、基本的にくわえたり噛んだりして遊ぶ物です。ですが、犬の唾液には雑菌が多く、唾液のついたおもちゃは、ゴミやほこりが付着しやすくなってしまいます。
そのため、可能であればおもちゃは子犬が遊んだその日のうちに洗うことをおすすめします。とはいえ、ぬいぐるみなどは毎日洗うのはなかなか難しいため、最低でも1週間に1回程度は洗濯するようにしましょう。
いずれのおもちゃも洗ったり洗濯したりした後は、しっかりと乾燥させることが大切。たまに天日干しをするのもおすすめです。
注意点5:定期的におもちゃの状態を確認する
子犬のおもちゃの破損による誤飲やケガなどの事故が起きてしまわないよう、注意が必要です。そのためには、日頃から定期的におもちゃの状態を確認しておく必要があります。
子犬の力は日に日に強くなっていくものです。「このくらいなら大丈夫かな」と思っていても、あっという間に壊してしまうことがあります。細かいところまでよく見るよう、普段から心掛けましょう。そして、不安のある場合は使用しない、あるいは廃棄するといったことが必要となります。
ペティオおすすめの犬用おもちゃ関連商品
ペティオは、子犬が喜ぶおもちゃを多く取り揃えています。今回はその中から、特におすすめの商品3点をご紹介します。
おすすめ商品
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かんでるボーンデンタル S ソフト「かんでるボーンデンタル S ソフト」は、噛んで楽しく口内のケアもできるデンタルタイプのおもちゃです。噛むと奥歯の溝までラバーの突起がしっかり届き、口の中や舌をしっかりと刺激する形状となっています。ペーストポケット付きでデンタルジェルを塗り込むことができるため、初めて与えるときにも子犬の興味を引くことが可能です。
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ヴィスポ ラテックス ボム「ヴィスポ ラテックス ボム」は、やわらかいラテックス製のカラフルなおもちゃです。小さめのサイズなので、子犬の小さなお口でもくわえやすく、噛み心地も抜群です。サイドの2ヵ所にロープがついているため、振り回すこともできます。おもちゃの中には、噛むとピューピューと元気に鳴る笛が入っています。
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犬用おもちゃ EthicalDoor エシカルドア かみぐるみ エビ天噛む場所によってやわらかさとパリパリ感の両方の感覚を楽しむことができるエビ天型のかみぐるみ。地球を考えたペットボトル由来の再生ポリエステル生地からできている、エシカル仕様のおもちゃとなっています。おもちゃの中には、噛むことで音が鳴る笛が入っています。
子犬のおもちゃは月齢や体に合わせた物を選び、定期的なメンテナンスが大切
さまざまなタイプがある犬のおもちゃですが、子犬の月齢や状況に合わせて選んであげることが大切です。また、与えっぱなしにするのではなく、いっしょに遊んであげたり、定期的におもちゃを洗ったりすることも必要です。成長によっておもちゃのサイズと体格が適さなくなることがあるため、安全に使用できるものであるかの確認は常に行うことが重要です。
しつけや健康のためにもおもちゃのこまめな管理を行い、いつでも子犬が楽しく安心して遊べるようにしましょう。
よくある質問
子犬のおもちゃQ&A
- 子犬にとって、おもちゃとはどんな物?
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子犬にとってのおもちゃは、生き物としての本能「狩猟欲求」を満たすことができる物であり、飼い主さんとのコミュニケーションを図るための物でもあります。犬は本来、本能的に「狩りをしたい」という欲求を秘めている生き物です。ですから、犬にとっておもちゃで遊ぶ行為は疑似的に狩りをすることにつながり、それによって本能的な欲求を満たすことができるのです。
- 子犬におもちゃを与えるメリットとは?
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子犬におもちゃを与えて遊ぶことで、運動不足の解消やストレス発散につなげることができます。その他にもおもちゃで遊んでいる時間の中で、「待て」や「おすわり」「おいで」などの言葉をかけることで、しつけやトレーニングにもなることに加え、デンタルタイプのおもちゃやロープ状のおもちゃは、歯磨きの代わりにもなります。
- 子犬のおもちゃ選びのポイントとは?
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月齢やその時期の遊びの傾向などをよく観察しておもちゃを選んであげましょう。また、子犬といえども、噛む力や振り回す力は相当なものです。思い切り遊ばせてあげるためにも、強度がしっかりしたおもちゃを選ぶ必要があります。また、犬用のおもちゃには対象の犬の体型などの表記がありますので、注意して見てください。犬のサイズに合わないおもちゃは、事故の原因となりかねません。