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室内飼いのネコちゃんは運動不足になってしまうことも少なくありません。
そのため、おもちゃを使って運動不足解消、ストレス発散してあげることが大切です。
そこで今回は、ヤマザキ動物看護大学助教の荒川真希先生に、おもちゃ選びのポイントやおもちゃで遊ぶメリット、おもちゃで上手に遊ぶためのルールなどを解説します。(最終更新日2024年9月27日)
目次
ネコちゃんをおもちゃで遊ばせるメリットは?
ネコちゃんにとっておもちゃは、運動不足の解消に役立つのはもちろんのこと、メンタル面でも大切な役割があります。
ここでは、ネコちゃんをおもちゃで遊ばせることの4つのメリットについてご説明します。
運動不足の解消や体力づくりにつながる
室内飼いのネコちゃんも、日頃からタワーでの上下運動や家の中を動き回ることなどで多少の運動はできていますが、それだけでは不十分な場合がほとんどです。
遊びを通じて積極的に体を動かすことは、ネコちゃんの健康維持に欠かせません。
また、運動不足の解消によって肥満の予防につながり、結果的にネコちゃんの筋力や体力を育てることもできます。
ネコちゃんの狩猟本能を満たすことができる
ネコちゃんは本来、狩りをする動物であり、室内飼いのネコちゃんにも狩猟本能は残っています。おもちゃは、そんなネコちゃんの狩猟本能を満たすために欠かせないアイテムです。
ネコちゃんの脳内には、おもちゃを追いかける時には「ドーパミン(楽しい・快い)」、おもちゃを捕まえる時には「エンドルフィン(高揚・幸福感)」が分泌されます。
また、ネコちゃんの狩猟本能を満たすためには、「捕まえた!」とネコちゃんに思わせてあげることが大切です。そのため、遊びの最後には、ネコちゃんにおもちゃを捕まえさせて、狩猟本能を満たしてあげましょう。
猫じゃらしやボールなど「実体」のあるおもちゃが、ネコちゃんの狩猟本能を満たしてあげやすいです。
ストレス解消になる
おもちゃで遊ばせてあげることで、ストレスによる攻撃行動や破壊衝動、毛が薄くなるほどの過剰なグルーミングなど自傷行為のリスクが減少します。
また、昼間に十分なエネルギーの発散と退屈な時間を解消させてあげることで、飼い主さんの生活リズムに合うようになり、夜の時間帯の活動が比較的穏やかになります。夜中に飼い主さんを起こしにきたり、走り回ったりという行動の予防にもなるでしょう。
ネコちゃんとのコミュニケーションがとれる
一緒に遊ぶことはネコちゃんとの大切なコミュニケーション。ネコちゃんと飼い主さんの信頼関係を築くうえでも大切です。
また、毎日の遊びでネコちゃんの動きを観察することで、病気やケガにいち早く気づけることも。
ネコちゃんと上手に遊ぶための6つのルール
ネコちゃんとおもちゃで遊ぶ際には、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
ここでは、ネコちゃんと上手に遊ぶための6つのルールについて、それぞれ説明します。
ルール1:遊ぶときは、できるだけおもちゃを使う
ネコちゃんは動いているものに対して、引っ掻いたり、噛みついたりする狩猟本能があります。
飼い主さんの手や指で遊ぶと、手指を「おもちゃ(=獲物)」だと認識してしまい、引っ掻き癖や噛み癖がついてしまいます。そのため、必ずおもちゃを使って、狩猟本能を満たしてあげましょう。
ルール2:ある程度広いスペースを確保する
ネコちゃんと遊ぶときは、必ずある程度広いスペースを確保しましょう。
また、ネコちゃんが遊びに夢中になっても危なくないように、ぶつかっても痛くないものだけを置くなど、普段からできる安全対策も忘れないようにしましょう。
ルール3:短い時間でも遊んであげる
短い時間でもよいので、ネコちゃんとこまめに遊んであげることが大切です。
ネコちゃんの体力や年齢、猫種にもよりますが、1回10分、1日2回以上遊んであげるのがベストです。もし、飼い主さんが忙しく、ネコちゃんと遊ぶ時間を十分にとれない時は、1回5分でも問題ありません。その分、小刻みに何回かに分けて遊んであげると良いでしょう。
猫種や年齢にもよりますが、1日トータルで15分から25分くらいを目安に遊んであげてください。
ルール4:複数のおもちゃを用意して、遊んだら片付ける
ネコちゃんは飽きっぽいので、夢中だったおもちゃも、遊び続けると反応が悪くなってしまうことがあります。今日はこれ、明日はこっち、というようにおもちゃにバリエーションを持たせましょう。
また、遊んだ後はきちんと片付けましょう。毎回きちんと片付けることで、おもちゃをできるだけ飽きさせないようにできます。
その他、ネコちゃんが1人で遊んでいるうちに誤飲してしまったり、棒状のおもちゃを咥えたままタワーから飛び降りるといった事故も防ぐことができます。
ルール5:遊ぶ時間帯を決める
ネコちゃんはルーティンワークをとても好み、生活のリズムが崩れたり、環境が変わったりするのを嫌います。そのため、ご飯の時間と同じように、遊ぶ時間も決めておくのがオススメです。
また、ネコちゃんは夜行性のイメージがありますが、実際には「薄明薄暮(はくめいはくぼ)性」であり、朝と夕方に活発になります。そのため、ネコちゃんの活動がより活発になる朝と夕方の時間帯に毎日少しでも時間をとって、遊んであげるのがオススメです。
ルール6:ネコちゃんの年齢に合わせる
○子猫の場合
とにかく好奇心旺盛で活発なので、たくさん遊んであげましょう。成長期の子猫にとっては、動くもので好奇心を満たしたり、いろいろなものに触れられたりするという意味でもおもちゃはとても重要です。
また、おもちゃで遊び、しっかりと体を動かすことによって筋肉がつき、健やかな成長を促すことができます。
○シニア期の場合
シニア期に入ると基礎代謝が徐々に低下してきています。筋肉量や運動量も減り、寝ている時間が増えるでしょう。
そのため、摂取するエネルギー量がこれまでと同じまま運動不足になると、太りやすくなります。肥満は心臓や腎臓、関節などの機能に影響を及ぼしてしまうため、太らせない工夫が重要です。
1日1回以上、ネコちゃんが活動的な時間帯である朝や夕方に適度な運動を心掛け、健康で長生きを目指しましょう。
また、高齢になると様々な器官や機能が衰えてくるため、動きを視覚的に捉えるタイプのおもちゃだけでなく、聴覚や嗅覚を刺激するおもちゃがオススメです。
皮革を使用した匂いのあるおもちゃや音のするおもちゃなどを試してみてください。また、普段のご飯を少し高いところに置いて、登る運動をすることで食べられるという状況を作ってあげるのもいいでしょう。
荒川先生からのアドバイス
荒川先生オススメ! ネコちゃんの興味をそそる、おもちゃ選びのポイント
おもちゃの監修も行っている荒川先生に、ネコちゃんの興味をそそるオススメのおもちゃを教えていただきました。
ここでは、荒川先生おすすめのおもちゃのタイプを3つご紹介します。
動きのあるおもちゃ
動きのあるおもちゃは、優れた動体視力を持つネコちゃんにとって、狩猟本能を満たしてくれるアイテムです。
おもちゃを床でちょこまか動かしたり、鳥のように飛ばしたりするなどの動きをつけることで、おもちゃに対する反応が良くなるでしょう。
ニオイのあるおもちゃ
ネコちゃんがニオイを感じる細胞の面積は、人の10倍ほどもあるといわれています。特に、皮革・獣毛・鳥羽といった獲物の匂いはネコちゃんを刺激し、とても反応が良いようです。
ちなみに、キャットニップやマタタビは、成分自体が脳に興奮作用をもたらします。
音がするおもちゃ
ネコちゃんは、犬よりもさらに優れた聴覚を持っていて、シャカシャカ・ガサガサ音などが大好きです。
ネコちゃんのおもちゃに鈴がよく使われているのも、鈴の音がネコちゃんの聴覚に訴えるからといわれています。
また、色はあまり認識しないといわれていますが、光を感じる細胞はとても発達しています。
そのためキラキラしたものには興味津々です。
荒川先生からのアドバイス
○ネコちゃんの狩猟スタイルと獲物の動きに近づけて遊んでみて
ネコちゃんの狩猟スタイルは、気づかれないように低い姿勢を保ち、忍耐強く時間をかけて、絶好のチャンスを狙って捕まえるというものです。
そのため、おもちゃで遊んでいるときも、椅子やラグの下、トンネルなど、部屋の中にネコちゃんが隠れられるスペースを作ってあげましょう。
また、おもちゃは狩りのターゲット(=獲物)であるため、獲物の動きを真似てあげるとネコちゃんはとても喜びます。
ネズミのようにちょこまかと床に水平に動かす、布の下で動かす、鳥のように床から飛び立つ、ウサギのようにぴょんぴょんと上下に跳ねるなど、ネコちゃんの獲物になりきって、おもちゃを動かしてみてください。
また、最後にはおもちゃを捕まえさせてあげて、ネコちゃんに達成感を得てもらいましょう。
おすすめ商品
教えて荒川先生!飼い主さんが気になるネコちゃんのおもちゃに関するQ&A
ネコちゃんによって、おもちゃの遊び方も様々です。実際にネコちゃんを飼っている飼い主さん達は、日ごろからどのような悩みを抱えているのでしょうか。
ここでは、ネコちゃんのおもちゃに関する飼い主さんからの質問に対して、荒川先生に答えていただきました!
Q. お留守番など、一人のときに安全に遊べるおもちゃはありますか?
A. 目を離しても安全なタイプの知育玩具がオススメです。
留守番のときのおもちゃは、狩猟本能を満たすというより退屈な時間をしのげるものが良いですね。パズルや転がすとフードが出てくるおもちゃなどの知育玩具がオススメです。
フードが出てくるおもちゃは、肥満予防のため、1日分のフードの中からおもちゃ用を捻出するようにしてください。カプセルトイの容器や小さめのペットボトルに、フードが出てくるくらいの穴を空けて自作することもできるので、試してみてください。
ただ、プラスチック容器をかじってしまったり、破壊してしまったりするネコちゃんには注意して与えましょう。
Q. 病気やケガなど、あまり動けないときはどのように遊べばいいですか?
A. 無理に遊ばず、治療を最優先にしてください。
治療が最優先なので、無理に遊ぶことは避けましょう。
それでもネコちゃんが遊んでほしそうであれば、大きな動きをしなくても本能を満たせる、フードを使った知育玩具が良いと思います。
Q. もう終わりにしたいけど遊び足りなさそう…。そんなときはどうしたらいいですか?
A. ネコちゃんだけで遊べる安全なおもちゃを使ってみてください。
ネコちゃんが遊び足りていないとき、飼い主さんに時間がないときは、けりぐるみを投げてあげたり、フードが出てくる知育玩具などを与えてあげたりするなど、ネコちゃんだけで遊べるおもちゃを試してみてください。
ただし、パーツに棒が使われていたり、遊んでいるうちにパーツが外れてしまったりする可能性のあるおもちゃは、事故につながる恐れがあるため、ネコちゃんだけの時は遊ばせないようにしましょう。
Q. 遊びに誘っても乗ってこない…。そんな時はどうすればいいですか?
A. 無理には誘わず、遊ぶ時間帯を変えたり、おもちゃの動かし方を工夫したりしてみてください。
ネコちゃんが誘いに乗ってこない時にしつこく誘うと、ストレスをかけてしまうことがあります。
ネコちゃんは朝と夕方に活発になるため、その時間帯の起きているタイミングで誘ってみて下さい。
その他、獲物の動きを真似てみる、新しいおもちゃを試してみるなどの方法があります。
ネコちゃんの飼い主さんに、オススメのおもちゃを使ってもらいました!
荒川先生にオススメいただいた猫じゃらしやけりぐるみを、実際に3匹のネコちゃんに遊んでもらいました。
ここでは、その時の飼い主さんからのコメントや荒川先生からのコメントをご紹介します。
八郎くん、七子ちゃん
<飼い主さんからのコメント>
革の匂いが気になるのか、クンクンと興味津々!動かすとひらひらしているのと、鈴の音に大興奮!
ハチ(白黒)はおもちゃを捕まえると革の部分をガジガジ…。ナナ(白)は普段滅多に鳴きませんが、
しまおうとすると鳴いて止めてきました。よほど楽しかったようです。
<荒川先生からのコメント>
嗅覚が刺激され、夢中になって遊べているようですね。猫じゃらしを床で水平に動かして、ネコちゃん達に追いかけさせてあげると、さらに運動効果があると思います。
たくさん体を動かして、最後に捕まえさせてあげることで、達成感や満足感が得られると思います。
ぐりくん
<飼い主さんからのコメント>
袋から出した途端、マタタビの香りがするのか飛びついてきました!
ハグしやすそうな大きさで、ハサミと尻尾部分は夢中で噛み噛みしてました。
よだれでベショベショにしながら遊ぶのはうちの子だけなのかな?
<荒川先生からのコメント>
ぬいぐるみのおもちゃは、獲物に噛みつき地面に倒して捕獲する動きで遊ぶことができます。マタタビの興奮作用により、よだれが出たりペロペロなめたりする行動はよく見られます。
ぬいぐるみのおもちゃでは、その場で動かしてみたり投げてみたりと動きをつけてあげると、より狩猟に近い形で遊べます。ネコちゃんの歯や爪が飼い主さんに当たらないように注意して遊んであげてくださいね。
さまざまなおもちゃで遊んであげることで、ネコちゃんとの仲を深めましょう
おもちゃを使って遊んであげることで、運動不足の解消につながるのはもちろんのこと、狩猟本能を満たしたり、ストレス解消になったり、愛猫とのコミュニケーションがとれたりと、ネコちゃんにとってさまざまな良い効果があります。
いろいろなおもちゃを使って遊んであげる中で、ネコちゃんとの信頼関係をさらに深め、ネコちゃんとの暮らしを楽しみましょう。