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監修
静岡県島田市向谷3-918-9
北里大学獣医学部獣医学科卒業。専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師、日本ペットマッサージ協会とペット薬膳国際協会の講師を務める。東日本大震災における被災動物レスキュー活動などにも参加。一般的な西洋医療のほか、鍼灸治療や漢方、ペットマッサージなどを通して動物の健康に取り組む。
シニア期は何歳から?ネコちゃんの老化のサイン
ネコちゃんのシニア期は、一般的に7歳からといわれています。最近では20歳くらいまで生きるネコちゃんも多く、シニア期はネコちゃんの一生の中でとても長い期間を占めるといえます。この長いシニア期を健康で快適に過ごすためには、飼い主さんの手助けが必要不可欠です。愛猫の老化のサインを見逃さず、適切なケアを行えるようしっかり準備しておきましょう。
猫は最初の2年で24歳、3年目からは1年に4歳ずつ年をとるといわれています。
■猫と人間の年齢の目安
※出典 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
身体機能・行動の変化
シニア期を迎えるネコちゃんには、どのような変化が起きるのでしょうか。身体機能や行動の変化に見られる老化サインは、次のとおりです。
<身体機能や行動の変化として見られる老化のサイン>
◯よりいっそう寝るようになる
◯食欲の低下、食欲の不振が生じる
◯毛ツヤがなくなる
◯被毛に白髪が増える
◯口臭が強くなる
◯爪とぎをしなくなって爪が太くなる
◯高い場所に登らなくなる
生活の中で愛猫の様子に気を配り、このような変化がないか見てあげてください。
性格の変化
シニア期を迎えると、ネコちゃんは性格も変わってきます。元々の気質にもよりますが、シニア期のネコちゃんに起こりうる性格の変化は、下記のとおりです。
<シニア期に起こりうる性格の変化の例>
◯そっけなかったネコちゃんが甘えん坊になる
◯甘えん坊だったネコちゃんが怒りっぽくなる
◯活発だったネコちゃんがおとなしくなる
◯身体機能の低下によって穏やかな性格になる
なお、シニア期になってネコちゃんの性格がきつくなる場合、老化による影響のほか、甲状腺機能亢進症という内分泌疾患の影響を受けている場合があります。気になる場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。
認知機能の低下
年齢を重ねたネコちゃんは、認知機能の変化によりさまざまなものへの興味が薄れ、夜鳴きが増えることがあります。人間でいう認知症と同じもので、認知機能不全症候群と呼ばれます。加齢やストレスが原因といわれていて、現在の医学では完治することはありません。認知機能不全症候群の具体的な症状は、下記のとおりです。
<認知機能不全症候群の主な症状>
◯昼夜逆転
◯トイレの失敗
◯興味の喪失
◯室内で迷う
◯意味もなくウロウロと室内を徘徊
◯鳴き続ける
これらの変化は、老化による認知機能の低下が影響していると考えられます。飼い主さんは、ネコちゃんの老化による行動の変化をおおらかに受け止め、適切なケアを心掛けてください。早めに獣医師に相談することも大切です。
シニア期ネコちゃんがごはんを食べないときのケア方法
シニア期のネコちゃんの中には、食欲がわかず、若い頃ほどごはんを食べなくなる子もいます。食欲不振には、病気が原因の場合と、老化が原因の場合があります。
食欲不振が症状として現れる病気には、慢性腎臓病と糖尿病が挙げられます。ごはんが食べられない様子で、多飲・多尿が見られる場合は、迷わずすぐに病院へ相談してください。ネコちゃんは数日間の絶食が続くと、肝リピドーシスと呼ばれる危険な状態に陥り、命にも関わる危険があります。すぐに適切な処置を受けてください。
老化が原因で食欲が減っている場合は、飼い主さんが工夫してあげることで食欲が回復する可能性があります。ここからは、実践しやすいケア方法をご紹介します。
食事環境に配慮する
シニア期のネコちゃんの食欲が衰えている場合、もしかすると「食べづらい」「食べるときに体が痛い」と感じているかもしれません。10歳以上のネコちゃんのうち6割以上の子が、何らかの関節炎を持っているというデータもあるため、食事周りの環境を見直してあげましょう。
食器は床に置くよりも、5~8cmの高さに置くほうが、頚椎への負担を軽減できます。また、15度程度手前に傾いていると、食事中の嘔吐が少なくなり、快適に食べやすくなって食欲が戻るかもしれません。
食欲が湧くよう食べやすい工夫をする
なかなか食べてくれない子には、食欲が湧くような工夫をしてあげるのもオススメ。いつものごはんを電子レンジや湯せんで温めてあげることで、香りが立って食欲増進につながります。また、お気に入りのおやつやふりかけなどをごはんにトッピングしてあげることで食いつきが良くなるかもしれません。
ドライフードが食べづらくなっている場合は、フードを細かくしたり、水でふやかしたりして食べやすくしてあげるほか、やわらかく消化の良いフードへの切り替えを検討してください。
なお、ごはんをあげる場所を快適にしてあげることも、ネコちゃんの食欲アップにつながります。暑い時期は涼しい場所で、寒い時期は暖かい場所でごはんをあげましょう。ネコちゃんが静かに落ち着いてゆっくりと食べることができる環境をつくってあげてください。
脱水を防ぐために水分補給を促す
脱水を防ぐためにも、水分をたっぷりととれるよう工夫をしてあげましょう。シニア期のネコちゃんは動くことがおっくうになり、積極的に水分をとらなくなることがあります。具体的には次のような方法があります。
・新鮮な水を常に用意する
ネコちゃんがいつでも新鮮な水を飲めるようにしてあげましょう。水用の器を毎日洗い、清潔に保ってください。
・水飲み場を増やす
家の中に複数の水飲み場を設置することで、移動中にネコちゃんが水を飲む機会を増やすことができます。ネコちゃんの居場所の近くや、お気に入りの場所で水を飲める環境を整えます。
・ウェットフードを活用する
ドライフードだけでなく、ウェットフードをごはんに取り入れることで、食事からも水分補給させることができます。好みの味のスープを薄めてあげるのも有効です。
・ぬるい水を用意する
ネコちゃんはぬるい水を好むことがあります。人肌程度のぬるい水をあげるのも効果的です。
なお、水の飲み過ぎは隠れた病気のサインなので、飲水量についても把握してください。ネコちゃんに最適な飲水量は、体重1kgあたり1日50mlが目安です。
シニア期ネコちゃんの食事にオススメアイテム
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高さと角度を変えられる 猫用 食事台テーブルの高さと角度を調節できる食事台。
食事台を使用することで、首や腰への負担が軽くなり、また角度をつけることで食べやすくなります。
高さ3段階、角度1段階調節可能。
シニア期ネコちゃんのための環境づくり
ここからは、シニア期を迎えたネコちゃんに、少しでも快適でのんびりと暮らしてもらうための工夫をご紹介します。快適な生活を用意してあげることで、精神的に安定し、ネコちゃんの生活の質が向上します。
これまでどおりのストレスのない生活を心掛ける
ネコちゃんは、基本的に環境の変化が苦手です。シニア期のネコちゃんが驚かないよう、引越しや模様替えは控え、安心できる環境を保ってあげてください。来客や新しいネコちゃんを迎え入れるほうが無難です。
ネコちゃんが安心できる隠れ場所を作ってあげるほか、過剰な音や光の刺激がないかをネコちゃん目線で確認してあげましょう。また、ネコちゃんが良くいる場所は定期的に掃除し清潔に保ってあげてください。
居心地の良い好みの寝床を作る
ネコちゃんにとって快適な室温は、夏なら25-28℃、冬なら25℃前後です。空調を使い、いつでも快適で静かに過ごせる場所を確保してあげてください。シニア期のネコちゃんにとって、居心地の良い好みの寝床を作ることは非常に重要です。年齢とともに、ネコちゃんは体力が低下し、長時間の睡眠がさらに必要になります。そのため、寝床が快適であることが健康と幸福感に直結します。
上下に動かなくてよいフラットな環境を整備
シニア期のネコちゃんには、上下に動かなくて済むフラットな環境を整備することが非常に重要です。加齢とともに、ネコちゃんは関節の痛みや筋力の低下により、階段の上り下りや高い場所へのジャンプが困難になることがあります。フラットな環境をつくることで、これらの動作による負担を軽減し、快適に生活することが可能です。
さらに、食事や水、トイレ、寝床などの日常生活に必要な場所へのアクセスが簡単にできるとストレスを減少させ、自立した生活をサポートすることができます。
シニア期ネコちゃんのための環境づくりにオススメアイテム
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ファブリッククッションステップ段差の上り下りをサポートするステップ。
ゆるやかな傾斜でシニアや足が短いネコちゃんにも優しい。
広げてマットとして、折りたたんで2段に、2台を組み合わせて3段ステップにしても使えます。 -
ハッピークリーン 犬・猫ペット臭さ 消臭&除菌EXネコちゃんが使うベッドやおもちゃ、トイレなどに使えるペット用消臭剤。
うちの子が過ごす場所を消臭&除菌して清潔に保ってあげましょう。
シニア期ネコちゃんの遊びと運動
ネコちゃんの健康を維持するために、遊びと運動は欠かせません。年齢を重ねると、ネコちゃんは体力や筋力が低下し、活動量も減少します。
その結果、運動不足による肥満や関節の痛み、さらには認知機能の低下といった健康リスクが高まる可能性があります。シニアになって遊ばなくなったネコちゃんも、飼い主さんが積極的に遊びに誘い、好奇心を刺激してあげましょう。
興味を示すおもちゃを探す
シニア期のネコちゃんは、若い頃と比べて活動量が減り、遊びへの興味も薄れがちです。しかし、好みのおもちゃを見つけることで、ネコちゃんの好奇心を再び引き出すことができます。音が出るおもちゃや、ニオイのあるおもちゃなどの中から、興味を示すものを探してあげてください。
程良い遊びを促す
シニア期のネコちゃんには激しい運動は不要ですが、適度な遊びは心身の健康を保つために欠かせません。短時間で軽い運動を取り入れた遊びを心掛け、ネコちゃんが疲れすぎないように注意しましょう。特に、ネコちゃんが自然な動きで楽しめる遊びをすることで、健康的な生活をサポートできます。
シニア期のネコちゃんにオススメの運動時間は1日10~20分程です。1日数回に分けて、一緒に楽しく遊んであげてください。
スキンシップをしながらマッサージやストレッチをする
遊びと同時に、スキンシップを通じてネコちゃんがリラックスすることも大切です。優しくなでてあげながら、軽いマッサージやストレッチをすることで、筋肉の緊張をほぐし、関節の可動域を保つことができます。
シニア期のネコちゃんは体のケアが必要な時期なので、日常的に優しくマッサージを行い、健康維持に努めましょう。
シニア期ネコちゃんにオススメアイテム
シニア期ネコちゃんのお手入れ
シニア期のネコちゃんは年齢とともに身体機能が低下し、自分で十分なグルーミングができなくなります。そのため被毛の手入れが不十分になって、皮膚のトラブルや感染症のリスクが高まります。
飼い主さんが、ブラッシングなどでお手入れをしてあげましょう。
お手入れの時間は、飼い主さんとネコちゃんとのスキンシップの時間としても重要です。飼い主さんが丁寧にケアしてあげればネコちゃんは精神的に安定して穏やかな気持ちになり、ストレスの軽減につながります。
シニア期のネコちゃんのお手入れについて、下記で詳しく解説します。
優しくブラッシングする
シニア期のネコちゃんは、毛が抜けやすくなる一方で、自分でのグルーミングが難しくなることがあります。毎日優しくブラッシングをして毛のもつれを防ぎ、健康的な被毛を維持しましょう。ブラッシングは血行を促進し、皮膚の健康にも良い影響を与えます。
毛玉は安全にカットする
特に長毛種のネコちゃんは、シニア期になると毛づくろいが減り、毛玉ができやすくなります。毛玉を放置すると皮膚に負担がかかるため、定期的にチェックし、必要に応じて安全にカットしましょう。切れ味の良いハサミや専用のカッターを使用し、ネコちゃんが嫌がらないように短時間で行ってください。
顔周りは優しくソフトにケアする
顔周りのケアは特に慎重に行いましょう。目や鼻、口元は敏感でデリケートな部分なので、ペット専用のウェットティッシュや、コットンを使って優しく拭き取るようにします。目やにや鼻水が溜まりやすいシニア猫には、こまめなケアが必要です。食事の後、口の周りに汚れが残ったままでは皮膚炎につながるため、特に注意して見てあげてください。
シャンプーやサマーカットは不要
シニア期のネコちゃんには、無理にシャンプーやサマーカットをする必要はありません。頻繁なシャンプーは皮膚のバリア機能を弱める可能性があるため、必要な場合に限り、獣医師と相談の上で行いましょう。ネコちゃんのストレスを最小限に抑え、快適に過ごせる環境を優先してください。
シニア期のネコちゃんにオススメのアイテム
ネコちゃんにずっと快適に長生きしてもらえるように環境を整えよう
シニア期のネコちゃんが快適に過ごせるように環境を整え、愛情をもってサポートしてあげることが大切です。また、日頃から定期検診を受けるなど、相談しやすいかかりつけの獣医師を持つこともオススメします。
ネコちゃんの老化による変化をおおらかに受け止め、穏やかなシニアライフを支えていきましょう。
よくある質問
- ネコちゃんの老化のサインを教えてください。
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ネコちゃんの老化のサインには、運動量の減少や食欲の変化、被毛のツヤがなくなることがあります。また、夜鳴きやトイレの失敗も老化の兆候です。これらのサインを見逃さず、早めの対策をとることが重要です。
- 愛猫が自分でグルーミングしなくなりました。どのようなお世話が必要ですか?
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ネコちゃんが自分でグルーミングをしなくなった場合、飼い主さんが毎日ブラッシングしてあげることが必要です。目やにや鼻水のケアも忘れずに行い、皮膚や被毛の健康を維持しましょう。
- ネコちゃんのシニア期を迎える飼い主さんの心構えを教えてください。
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シニア期には衰え、ネコちゃんにさまざまな変化があります。飼い主としてはその変化を受け入れ、適切なケアを行うことが大切です。定期的な健康チェックや獣医師との連携も欠かせません。