特集/Pickup
ネコちゃんにとって快適な家とは、
どんな家なのでしょう。
事故やトラブルのない安全さも確保して、
愛猫と人が安心して暮らせる環境とは?
ヤマザキ動物看護大学 助教の
荒川真希先生にうかがいました!
監修ヤマザキ動物看護大学
動物臨床栄養教育学研究室
荒川 真希 助教
修士・認定動物看護師・ペット栄養管理士・猫の専門医療従事者
CATvocate取得。
認定動物看護師として猫の泌尿器疾患予防のための栄養学や動物看護学教育について研究。
「猫にいいこと大全(主婦の友社)」監修。
安心できる
居場所がある
ネコちゃんは「外敵から身を守る」習性が備わっています。そのため、テリトリー(部屋)を見渡せる高い場所や、身を隠せる狭い場所を好みます。キャットタワーを設置したり、ネコちゃんの隠れ場所として棚の下段やベッド下の一角といった狭い場所を開放したり、ネコちゃんが落ち着ける場所を作ってあげましょう。
また、猫の社会では「より高い位置にいるほうが優位」と考えるので、飼い主さんの目線よりも高い場所を作ってあげることで、ネコちゃんは安心できます。
“危ないもの・場所”から
守ることができる
家の中には、ネコちゃんにとって危険なものや場所がたくさんあります。例えば、ひも状のものやビニール袋などを誤飲してしまったり、人にとっては身近な食べ物や植物でもネコちゃんにとっては有害なものを誤食してしまうことがあります。
また、お風呂場やトイレなどの水場、火や刃物を扱うキッチン、洗濯機や押し入れへの閉じ込めなど、ネコちゃんの興味をひくところも危ない場所がたくさんあります。
これらの危険からネコちゃんを守るために、ネコちゃんが入れる場所を制限したり、飼い主さんの外出時や目が届かない時間帯はサークルを活用するのも有効です。
誤飲、誤食をしてしまったら?
何を食べたかによって応急処置は変わってくるので、まずは動物病院に相談しましょう。口の中にある状態なら取り除くことができる場合もありますが、無理に引っ張り出すと消化管を傷つけてしまうこともあるので危険です。
飲み込んでしまった可能性があるなら、嘔吐・下痢・食欲がない・元気がないなどの症状が出ていないかを見極めて、症状があるようならすぐ病院に連れて行きましょう。
運動不足もストレスも
解消できる室内環境を
室内環境が整っていれば、ネコちゃんは外に出なくとも快適に暮らせます。ネコちゃんの運動不足解消には、飼い主さんとの遊びと、キャットタワーなどを使った十分な上下運動ができる環境が大切です。また、おもちゃでの遊びを通じて狩猟本能を満たしてあげることで、ストレス解消にもつながります。
キッチン周り
キッチンの作業スペースやコンロは、包丁などの刃物が置いてあったり、火を使っている可能性が高く、やけどやケガのリスクが高い場所。ネコちゃんが入れないようにできればベストですが、難しい場合はコンロの周りをガードするなどで対策をしましょう。
お風呂
入浴する飼い主さんが気になる、水が飲みたい、暖かいなどの理由で、ネコちゃんはお風呂場に行くことがあります。しかし、つるつるした浴槽は足を滑らせやすく、最悪の場合、溺れてしまうことも……。浴槽にお湯を張っているときはネコちゃんをお風呂場に入らせない、目を離さない、留守中はお風呂のお湯はできるだけ抜いた状態にする、などを心がけましょう。
洗濯機や引き出しなどの狭い場所
狭くて静かな場所を好むネコちゃん。「いつの間にそんなところに!?」という場所でくつろぐこともあります。しかし、入っていることに気づかずに飼い主さんがうっかり閉じ込めてしまうリスクも。扉や引き出しは開けっ放しにしない、洗濯機はふたを閉めておく、衣類を入れる前にネコちゃんがいないか確認するクセをつけましょう。
家具のスキマ
ネコちゃんが入り込んだ隙間に思いがけず挟まってしまい、もがいて出てこられなくなることも。ネコちゃんは、顔の大きさ程度の隙間は入れるとされています。個体差もありますが、目安として子猫なら3センチ、成猫なら5センチ以上の隙間はそもそも作らない、入れないようガードするなど対策するようにしてください。
電源コード類
ネコちゃんが電源コードを噛んでしまうと、感電の恐れがあるのでとても危険です。コンセントカバーやコードカバーをつけるなどの工夫をしましょう。また、床にコードを直接置かずに箱や敷物で隠すなど、ネコちゃんの目につかないようにすることも大切です。
食べ物
人にとっては身近でも、ネコちゃんにとって危険な食べ物は意外と多いもの。玉ねぎやにんにく、長ネギやニラなどのネギ類や、チョコレートやココアなどのカカオ類、ブドウの皮、貝類、生のタコやイカなどが該当します。飼い主さんがしっかり把握しておきましょう。
こんなことも要注意!
知っていれば防げるリスク
脱走
実は、室内環境が整っていれば、ネコちゃんは外に出る必要がありません。しかし、一度でも屋外を経験すると、外も自分のテリトリーとして出たがるようになります。脱走防止策として、玄関や窓を開けるときには、サークルやケージに入れる、網戸をロックする、玄関に柵を設置するなどの対応が有効です。
部屋の香り
植物の成分を濃縮したアロマオイルや、植物を原料としたお香をネコちゃんが長時間嗅いだり直接なめたりすると、代謝ができずに中毒を起こす可能性があります。ネコちゃんの健康のためには使用しないようにしましょう。
観葉植物
ポトスなどのサトイモ科、ユリやチューリップのユリ科などが知られており、これらはネコちゃんが花瓶の水をなめるだけで中毒症状を起こす場合も。それらの植物を家の中に置く場合には、ネコちゃんの入れない部屋に置くなどの対策が必要です。
もっと快適に!
ネコちゃんとの暮らしQ&A
夏の暑さ・冬の寒さ対策は?
ネコちゃんの適温に合わせつつ、避難場所をつくるなど工夫を。
猫種にもよりますが、ネコちゃんは人よりも少しだけ暖かめ(23~28℃くらい)を好みます。真夏や真冬は、飼い主さんの不在時でもエアコンをつけてあげましょう。
ただし、ネコちゃんは涼しすぎるのも苦手です。夏はエアコンの涼しさから自分で逃げられるように、もぐりこめる布団を用意したり、隣の部屋へ移動できるようにしてあげると良いですね。
また、ネコちゃんは人工的な風が苦手な場合が多いので、扇風機を使うときには、寝床やキャットタワーといったネコちゃんの居場所に当たらないように設置して、室内の空気循環用として活用してください。
飼い主さんのおうち時間が長くなったり短くなったりすることの影響は?
そこまで心配しなくてもOK、ただし性格を見極めて。
ネコちゃんはもともと単独行動をする動物なので、一人の時間が多くてもさほど気にしない動物ではあります。家の中の環境が変わっていなければ、そこまで心配することはないでしょう。しかし、テレワークで飼い主さんとずっと一緒だった子や、甘えん坊な性格の子は、もしかしたらさみしがるかもしれません。そうしたケースでは、いきなり長い時間不在にするのではなく、飼い主さんの外出時間を少しずつ増やして、一人の状態に徐々に慣らしてあげることが大切です。
キャットタワー:安心できる場所にする
ネコちゃんには部屋を一望できる高い場所が必要ですが、グラグラしたり登りにくかったりしては、リラックスできません。安定していて、段差があり、もし段差に体をぶつけてしまっても痛くなく、滑りにくい素材でできているキャットタワーなら安心して過ごせるでしょう。
また、キャットタワーはネコちゃんが長い時間を過ごす場所です。ゆったりと過ごせるように、最上段や途中に寝そべることができる広さがあるものがベスト。子猫やシニア猫で、タワーの段差が大変そうなら、ステップを置くなどの工夫をしてみてください。
サークル:さまざまな危険から守ってくれる
サークルを選ぶポイントは「どういうときに使うか」を考えると良いでしょう。飼い主さんの不在時に長時間サークル内にいてもらうなら、普段使っているトイレ・水・ご飯が入れられて、かつ、ネコちゃんが眠れる場所と上下運動ができるような広めの2段・3段のものをおすすめします。子猫の場合は1段タイプや高さが調節できるものを選ぶと良いでしょう。
子猫におすすめの使い方
特に好奇心旺盛な子猫のときは、電気コードなど危ないものをかじっ
たり、どこに隠れたか分からなくなったりするもの。不在時だけでな
く、入浴中や調理中など飼い主さんの目が届かない時間帯は、サーク
ルで過ごしてもらうと安全です。ネコちゃん自身も狭いところが好き
ですから、サークルという自分の居場所があると安心します。
成猫になってからは?
ドアや窓を開けるときや、来客を怖がる場合など、一時的なネコちゃ
んの避難場所としてサークルが便利です。また、もしも自然災害が起
きたら、避難所ではサークルやケージに入れておかないといけない状
況になるはず。そのために慣れさせておくという防災的な観点からも、
サークルを使うことには意味があります。
多頭飼いの場合
仲の良いネコちゃん同士ならサークルの共有が可能です。しかし、仲があまり良くないネコちゃんならサークルは1匹につき1つが基本です。ケンカしそうなときに片方をサークルに避難させるといった使い方もできます。
キャットタワー・サークルは
こんな場所に置こう
- ぐらつかない安定した場所
- エアコンや扇風機の風が直接来ない場所
ネコちゃんは人工的な風がヒゲに当たるのを嫌がります。 - 静かな場所
テレビやドア横といった、音が出る物のすぐ近くは避けましょう。
ネコちゃんがサークルに慣れるには?
基本的にネコちゃんはサークルのような狭いところが好きですが、慣れないようなら、自由に出入りできるようにしたり、サークル内でおやつをあげたり、「サークルは安心」「中にいると良いことがある」という記憶になるように働きかけてみてください。
外や部屋の中が見えすぎて気になっているようなら、薄手のタオルで一部を覆ってあげるのもおすすめです。ただし、タオルをかじってしまう子には注意しましょう。